公益財団法人 日本呼吸器財団:呼吸器疾患の病態解明・研究推進、啓発活動


公益財団法人 日本呼吸器財団
平成31年度研究助成のご報告

気管支喘息とCOPDの合併病態に焦点を当てた慢性気道疾患患者の包括的前向きコホート研究

研究代表者 北海道大学大学院医学研究院 内科学分野・呼吸器内科学教室・教授 今野 哲 先生

研究成果

本研究では、1)COPD患者登録データの解析 2)登録された気管支喘息患者の前向き観察研究の継続、解析 3)COPD、気管支喘息を含む慢性気道疾患を有する高齢患者(55歳以上)の登録を実施することを目的とする。
1)については、計10年間のフォローアップが終了しており、本研究期間においては、CT画像で評価した心血管病変とCOPDの予後との関連、本邦独自の、CIDとCOPD予後予測に関する結果を報告した。2)に関しては、難治性喘息の増悪に関するT2マーカーのcut off値の設定およびリスクスコアに関する報告、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)の変動と増悪との関連に関する報告をおこなった。3)に関しては、順調に患者登録が進行しており、Phase I調査として、慢性気道疾患を有する患者(本研究に参加する施設に通院中の気管支喘息、COPD、肺気腫、慢性気管支炎のいずれかと呼吸器専門医により診断された55歳以上の者)を登録し、phase II調査として、一定の基準に従ってACOが疑われる患者に対し、北海道大学病院にて精査を行っている。2021年7月時点で1000例を超える登録状況であり、今後、初回登録患者の臨床背景に関する論文を執筆する予定である。更に、同意が得られた患者に対しては気管支鏡検査にて気管支粘膜組織および気管支上皮細胞を採取し、今後、網羅的遺伝子発現解析等を通じてACO病態の分子生物学的解析を進めことも検討している。


第62回日本呼吸器学会学術講演会での報告


受賞コメント

前向き観察研究は、医師のみでの遂行は困難であり、多職種の協力と資金により成立し、その継続は容易ではありません。近年は、世界的に認められる結果を出す為には、症例数の多さも必要条件であると思っております。医学研究が、薬剤を中心とする臨床治験が主流となっており、基礎研究、トランスレーショナル研究、前向き観察研究の立ち位置を懸念しております。喘息、COPDを広く含む、慢性気道疾患の個別化治療に向けた礎を築くために、大学病院の診療科及びその関連施設を中心とした本臨床研究の継続に邁進する所存です。

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