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研究代表者 順天堂大学大学院医学研究科 呼吸器内科学・准教授 瀬山 邦明 先生
希少肺疾患は、その希少性ゆえ病因・病態は未解明な点が多く、確立された根治的治療法がないことが多い。そのため診療や研究の発展には、自国内での実態や臨床像の集積と解析が不可欠であり、折りに触れて疫学調査がなされてきた。しかし、主に横断的調査にとどまり継続性に乏しい状況が続いていた。そこで、呼吸器学会および呼吸器財団の支援のもとに継続性を担保した公的な希少肺疾患レジストリを構築し、縦断的疫学研究を行うことを目的として、平成29年度の日本呼吸器財団研究助成に応募した。呼吸器学会が将来的に管理者となる稀少疾患登録制度の創設を目指し、国内での総患者数がデータベース構築に適切なサイズで、かつ、新規治療が開発された(あるいは開発中)の2疾患{リンパ脈管筋腫症(LAM)とα1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)}を対象とした。研究組織としては、日本呼吸器疾患学会閉塞性肺疾患部会および細胞細胞・分子生物学部会の各部会長に参加いただき、呼吸器学会8支部からLAMやAATDに詳しく各支部において指導的役割を担える会員に共同研究者あるいは研究協力者として加わっていただいた(合計13名より構成)。2017年4月15日に第1回のレジストリ会議を共同研究者とともに開催し、LAMおよびAATDのデータベース入力項目、Web入力システム、呼吸器学会員へ登録制度への広報や参加を働きかけるため方法など、基本事項を話し合った。その後は毎年呼吸器学会学術集会の際にミーティングを開催し、進捗状況や問題点について議論した。研究計画は順天堂大学順天堂医院倫理審査委員会で審議され、2017年5月19日付けで承認された(承認番号17-019)。また、稀少疾患登録制度ホームページhttp://lamaatd.com/を開設した。
研究計画の承認後はWebデータベースシステムの構築に時間を要した。その過程で、厚生労働省難治性疾患政策研究事業とAMED難治性疾患実用化事業の情報を集約・統合して横断的情報基盤を構築する難病プラットフォーム(以下、難プラ)と契約することにより、セキュリティに優れ、利便性の高い難プラのレジストリシステム用いることとなった。しかし、その入力項目のカスタマイズに時間を要した。レジストリに登録する臨床情報は難プラとの契約に基づき日本語版EQ-5D-5Lを含めた。難プラと契約することにより、中央倫理審査機能を持つ「京都大学医の倫理委員会」で審査を受け2020年1月28日付けで承認された(第R2295号)。これにより、LAMやAATD患者の診療をしている医療機関ごとに自施設で改めて倫理審査を受ける必要がなくなり、参加施設にとって利便性を高める事が出来た。
3年という長期間を要したがやっと仕組みが完成した。LAMやAATDを診療する呼吸器学会員に協力を呼びかけて継続的にデータ登録して頂き、また自施設からも率先して登録し、日本人のLAMやAATDの疫学データをフィードバックし診療や研究の発展の基盤となれるよう努力し呼吸器財団からの助成に報いたい。
疾患登録制度は海外では一般的に行われている疫学研究であるが、日本の医療環境ではなかなか普及してこなかった。特定疾患制度では、指定された難病に対する医療費助成と、臨床個人調査票データを集計して疫学調査を行い当該疾患の診療や研究の向上に資する目的があったが、様々な課題のため十分機能していなかった。継続性のある公的な登録制度は、国あるいは当該疾患の診療を担う学術団体(学会)が持つべきではないかと個人的には考えていたが、厚生労働省難治性疾患克服研究事業に携わった経験から、学会が担うことがより適しているとの想いを抱いていた。今回、「日本呼吸器学会との連携研究助成」として、日本呼吸器学会に帰属する希少肺疾患登録制度の第一歩として、日本呼吸器財団から研究助成をいただけたことをとても感謝申し上げます。また、その責任を全うできるよう取り組みたいと決意を新たにしています。