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研究代表者 京都大学医学部附属病院・呼吸器内科/リハビリテーション科 助教 田辺 直也 先生
COPD患者におけるフレイル・サルコペニアに関連する因子の多面的評価:多施設共同研究について、計画通りに2023年初めより症例集積を開始した。2024年6月末時点で、登録症例は京都大学医学部附属病院で約200例、共同研究施設で約70例の症例を登録した。登録時に、握力、5回立ち上がり試験、体組成評価、吸気呼気CT、呼吸機能検査、フレイルとサルコペニアに関する質問票(基本チェックリスト、簡易フレイルインデックス、SARC-F質問票)、簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)を施行した。一部の症例では、6分間検査、歩行速度、膝進展筋力測定、加速度計を用いた身体活動量計測(1週間)とスマートフォンを用いた自己食事撮影による食事量評価(1週間)を用いた評価を施行した。結果、登録時のJ-CHS基準を用いたフレイル評価では、プレフレイル状態が43%の症例で、フレイル状態は9%の症例で認められた。プレフレイル、フレイルは、呼吸機能や年齢と独立し、呼吸困難の程度と食事摂取量低下と関連していることが示された。特に、タンパク質摂取低下との関連を認めた。6分間歩行距離、歩行時の低酸素、歩行速度に与える因子として、胸部CTを用いて評価した肺気腫の程度が重要であることを示した。さらに、生体電気インピーダンス分析を用いた体組成評価を行い、骨格筋量低下よりも早期に骨格筋の質を反映するphase angleが低下し、プレフレイルやフレイルと関連する因子として重要であることを見出した。全例で施行したBDHQによる食事摂取量、各種栄養素摂取量とスマートフォンを用いた自己食事撮影による食事量評価の相関を確認した。超高齢者を除くとスマートフォンを用いた自己食事撮影の実施可能性を確認できた。現在も、目標症例数にむけて新規の登録を進めている。同時に2年目以降の評価を継続している。収集した血清について、バイオプレックスを用いたサイトカインアッセイの準備を、収集したCT画像についての画像解析の準備を行っている。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の生命予後は、治療法の向上により徐々に改善していますが、「元気に長く生きられるか」の指標である健康寿命の延伸は未達成のままです。加齢などにより心身の衰えた状態を表す「フレイル」、筋肉量が減り身体機能が低下する「サルコペニア」が健康寿命を損なう要因と考えられていますが、COPD患者がフレイルやサルコペニアへ至る過程に関連する因子は十分解明されていません。潜在的なCOPD患者数と医療資源の逼迫度合から、画一的な対策では対応困難なことは明らかであり、個別化された介入(薬物治療、リハビリテーション、介護サービスなど)が求められています。本研究では、COPD患者のフレイル、サルコペニアに関連する因子を、呼吸機能やCT画像解析に加え、運動負荷試験、筋力測定、身体活動量、食事栄養状態などの日常的かつ動的な指標を多面的に検討してたいと考えております。