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研究代表者 名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター・医員 古川 大記 先生
びまん性肺疾患は一般の呼吸器科医には診断が困難であり、呼吸器専門医、放射線科医、病理医の3者が合議の上、診断すべきとされる(=MDD診断)。しかし現実には、3つの領域の専門医が揃って討議し、MDD診断ができる施設はほとんどない。
そこで、日本呼吸器学会・日本放射線学会・日本病理学会・厚生労働省研究班・IBiS試験(AMED研究班:研究代表 浜松医科大学 須田隆文教授)とも連携し、Webを介したインタラクティブなMDD診断システムを構築し、24ヶ月以内に新規に診断されたびまん性肺疾患を登録するレジストリ研究(多分野合議による間質性肺炎診断に対する多施設共同前向き観察研究; PROMISE試験)を2020年9月に開始した。
本試験はMDD診断の有用性を示すと共に、MDD診断を標準化、早期発見・早期治療の機会を創出する研究で、日本呼吸器学会認定施設のうち268施設が参加を希望して頂いている。構築されるオールジャパンの精緻なデータベースを活用し、作成済み診断AIを改良してMDD時に提供し、MDD診断の効率化を目指している。
本試験は2020年7月3日からUMINで公開されている。
(https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000046337)
また、本試験のホームページからも進捗や詳細な情報が確認できる。(https://portal.mdd.systems/)
本試験ではWeb上に専用プラットフォームを構築し、このプラットフォームを用いて、臨床データの提出と画像データの提出、提出されたデータに基づくMDD診断、MDD診断結果の通知、AI診断をオンライン上で行っており、参加施設・事務局・MDD診断チームによるインタラクティブなコミュニケーションを実現する事で、クオリティの高いレジストリとデータベース構築の実施が可能となった。
本試験は2020年9月24日から症例登録を開始した。登録期間2年間、フォローアップ期間3年間で、2025年でデータ登録終了を予定している。中間解析を2022年10月に予定しており、それまでは途中解析ができないため、今回は登録状況のみを報告させて頂く。2021年6月29日時点での進捗は以下の通りである。
<登録症例数>673例/予定症例数2700例
<参加施設数>161施設
<主要評価項目>
・リアルワールドで、MDD診断に基づく間質性肺炎の相対的罹患率を調べる。
<副次評価項目>
・間質性肺疾患患者の疾患・進行と、ベースラインの各パラメータ・HRCT画像・CT画像パターン・病理画像パターンの関係を明らかにし、臨床アウトカム予測モデルを作成する。
・各間質性肺疾患で適切と考えられる治療に関係なく、過去24カ月以内に進行性の表現型を調査する。
間質性肺炎には、多くの癌より予後不良とされる特発性肺線維症など、慢性線維化性の肺疾患が数多く含まれています。近年、抗線維化薬の有効性が証明され、間質性肺炎の正確な早期診断と、それに基づく早期治療がますます重要になっています。しかし呼吸器科医であっても間質性肺炎の診断は難しく、患者さんに十分な診断・治療・ケアが行き届いていません。そこで、”インターネットを使って患者データをアップロードすれば、専門の医師による診断が得られる”システムを構築しました。ただし専門の医師数は限られるため、人工知能による診断システムも開発しました。これは国内のどこの病院でも利用可能です。本研究助成金を活用し、インターネット上で人工知能診断システムと専門医診断システムを組み合わせて運用し、円滑に診断が行えるか前向き研究を行います。本研究には持続的に利用できる仕組みを構築する予定であり、多くの方のアンメットニーズを解消していきたいと考えています。