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研究者 慶應義塾大学医学部 呼吸器内科・教授 福永 興壱 先生
新型コロナウイルス感染症(以下、 COVID 19 パンデミックから半年が過ぎようとしていた 2020 年夏、 諸外国から 罹患後に長期に持続する罹患後症状 についての 報告 が 散見 するようになった。しか し 、 我が国においては代表的な 罹患後症状の割合 について 以外に ほとんど 報告が なかった ことから 、 申請者らは 日本における罹患後症状の実態を明らかにするために、 1 000 例規模の大規 追跡 模調査を行 った。 その 対象と方法 として 、全国 参加 27 施設に、 2020 年 1 月から 2021 年 2 月末日までに C OVID 19 の確定診断 SARS CoV 2 に対する PCR 検査もしくは抗原検査陽性) で入院し退院 した 、 18 歳以 上の軽症・中等症・重症の患者に関して 、前向き及び後ろ向き観察研究を行なった。 基本的には各施設 で一定期間 内 の全入院患者に対して研究案内を郵送し 、 同意を得た患者に 対して 、診断 3 ヵ月後、診 断 6 ヵ月後、診断 12 ヵ月後に、紙あるいはスマートフォンアプリを用いてアンケートを行 った 。 結 果 、 C OVID 19 により入院した約 1000 症例からアンケートを回収すると共に、各入院施設から診療情 報を収集した。 罹患後症状 を 1 つでも有する割合は 、 診断 3 ヵ月 後、 6 ヵ月 後 、 12 ヵ月 後 と低下傾向 であるものの、 診断 12 ヵ月 後にも約 1/3 の患者が罹患後症状を有していた 。男性と女性では、女性の 方が罹患後症状の頻度が高かった。入院中に酸素需要の なかった 患者と あった 患者で、罹患後症状の 頻度を比較したところ、酸素需要の あった 患者で罹患後症状の頻度は高かった。若年者( 40 歳以下)、 中年者( 41 64 歳)、高齢者( 65 歳以上)を比較した場合、中年者で最も罹患後症状の頻度が高かった。 罹患後症状を一つでも有する被験者は、 QOL のスコア( EQ 5D 5L, SF 8 )が低く、不安や 抑うつのス コア( HADS )、新型コロナウ イ ルスに対する恐怖尺度、睡眠障害のスコアが有意に高い数値を示し 、 出勤はするものの労働パフォーマンスが低下している(労働生産性の低下)と感じる人が多いことが 判明した。今後、引き続き、収集したデータに関する詳細な解析を進め て いく 予定である 。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)は未曾有の感染症として蔓延し、医療の枠を超えその脅威が拡大しています。一方でCOVID-19は急性呼吸器感染症にとどまらず罹患時あるいは後に合併症が出現することが海外を中心に相次いで報告されています。そのような中、我々は今回頂いた助成を基に本邦におけるCOVID-19患者への前向きコホート調査及びアンケート調査を組み合わせてCOVID-19合併症の実態把握を明らかにすることを目的として研究を展開していきます。本邦におけるCOVID-19の長期合併症の実態が判明すれば、長期合併症予防に向けた介入の最適化を図ることができ、長期合併症に至るリスクファクターの解明につなげることで、そのリスクリダクションに向けた検討も行えるのではないかと考えています。